無職日記:富士山に登る#3

最初は全て順調だった。
天気にも恵まれ、すれ違う人々に笑顔で挨拶をする。

富士山には、各合目に山小屋がある。
六合目、新七合目と順調にクリアする。往復単純平均で一合分1時間で計10時間の行程だが、帰りは当然速いだろうし、背中の食料&水も軽くなっていくはずだ。
『楽勝だ!』そう確信した我々は、広がる景色を堪能しつつ、談笑しつつ登った。

最初のきっかけは、我々が八合目と確信して目指した山小屋に、
『元祖七合目』と書かれていたことだ。
『あれ、まだ七合目?』軽く衝撃が走る。
よく考えれば、我々が登った『富士宮口』は最短登山道であり、
五合目のかなり六合目寄りから登るのである。つまり、二合分登ったつもりが実際には一合+αだった。しかも、前回の日記に添付した写真のように、樹木のない富士山の高さを実感富士山の火口。つまり『日本のてっぺん』するのは難しい。頂上がすぐそこに見えるのである。計算が狂ったのを我々は静かに認めた。

しかし、『まだ人も一杯いるし、ちょっとペースをあげれば大丈夫だ』と冷静さを取り戻した我々は、サラリーマンのマストアイテムである日経新聞の記事を批評したりしていた。

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八合目を越える頃には、それまで僅かながら存在していた草も殆どなくなり、所謂『植物限界』より上になる。
まわりは岩だらけだが、雲は我々の眼下に広がり、空気もヒンヤリして気持ち良い筈だ。
しかし、疲労に加え、頭痛を伴う『高山病』にかかる者も現れた。
『おおーっ、これが高山病かぁ!』メンバは心配というより明らかな興味を示している。
しかし、実はメンバも結構キテいたのだ。平静を装っているが、私も結構キツイ。
息があがると回復が困難なので、『ヒッヒッ、フーッ』と何故かラマーズ法で歩を進める。

それでも、我々に『下山』という選択はなかった。
普段、滅多に予定のあわないメンバなのだ。1ヶ月前から計画していた。
ここで降りる訳にはいかないのだ。
高山病が酷い者から順に、『酸素缶』を消費していく。。。

9合目を超えると、所謂『胸突き八丁』だ。ぽつんと立った鳥居を抜けると、
霧が立ち込め、まさに『霊験富士』である。
ごくたまに人とすれ違うが、お互い既に無口である。
呼吸を乱れることは、歩を進めること以外にしたくないのだ。
それが解っているから、お互い目礼だけする。

見渡すと、殆ど人がいない。
先ほどまで一杯いた人は、途中の山小屋で宿泊し、ご来光を拝んで帰る人々だったのだ。
夕暮れに頂上を目指すものは、極めて少ないということに、我々は其の時に気付いた。

しかし、それでも我々は進んだ。黙々と。
そして、ついに頂上に到達したのである。
富士山の火口。つまり『日本のてっぺん』

<つづく>
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