有限会社Ayleeds社長日記。継接ぎだらけですが、世界一周旅行もやってます。

プチ社長日記:『グーグルに勝つ広告モデル』の話

グーグルに勝つ広告モデル (光文社新書 349) グーグルに勝つ広告モデル (光文社新書 349) 岡本一郎
JUGEMテーマ:ビジネス
決算作業でクソ忙しい中、合間を見て積んであった本書を読了。
えーっと、タイトルを見て(今更)グーグルのビジネスモデルの検証をして、その上で次世代の広告モデルを考える、、、というものかと思ってたが、正直その期待は外れた。
テレビを中心としたマスメディアの今後の有り様について考察したもので、特に放送(マスに対して同時性をもって情報を与えるには適しているが、対象の絞込みなどのリーチが甘い)は今後どうやってその領域を守るか、という点を重視している。そういう意味では副題の「マスメディアは必要か」という方がタイトルに適しているかな。
まぁ、IT屋が見ても参考には殆どならないね、って感じです。何でこのタイトルつけたのか正直微妙。

全体を通してみると何となく著者の言いたいことはわかるのだが、どうもマスメディア贔屓の視線というか、ちょっと楽観的かなー、と言う部分もある。
細かいことだが、議論の積み上げで精緻さに欠けるのも気になった。まぁ、言及しているのが多方面にわたるので、多少は仕方が無いかもしれないが。

「例えば、東京キー局を取り上げてみると、近年の決算では7−8割を放送事業による広告収入で上げており、いわゆるコンテンツ販売等の事業収入は1−2割しかありません。一方で放送事業の原価構成比は6割前後で、その他事業のそれは2割前後となっています。つまりテレビ局というのは、地上波放送に広告を流すと言う非常に儲かるビジネスのほかに、それほど儲けの出ない事業を細々とやっているという構図になっているのです。」
って、そりゃ放送事業が「その他事業」に対して収益構造で優位であるのは判るけどさ、「非常に儲かる」とか「それほど儲けのでない」なんて議論は売上げ比と原価構成比だけ見ててもわかんなくて、売上げ原価比出さないと判んねぇじゃねーか。調べりゃすぐ判るけど。
あと、「その他事業」ってのはこの文脈では新事業と置き換えて良い訳だし、だったらせめて直近何年かの成長性も併せて議論しないと、「その他事業」に投資することの是非には結びつかない。

別の箇所を見ると、「知の拠って立つ基盤」という議論で、よく知られる英国誌「ネイチャー」の調査結果である「ブリタニカとウィキペディアの正確性は大差ない」という議論を踏まえた上で、「でもウィキペディアの記述も元々はブリタニカなどの権威に依拠している」というのは別に否定しない。
でも、だから(放送/新聞などの)マスメディアは必要だ、というのはどうもね。当の権威といわれている新聞社がウィキペと同じネット上で無料で情報配信している訳だし。
勿論、世論形成とかの意味では放送の意義ってのは大きいけど、昨今の質の悪い放送を見るに付け、それも諸刃の剣という感じですねぇ。

そもそも既存のマスメディアvsインターネットという視点で語られているのか、既存のマスメディアの担い手である放送局・新聞社とウィキのようなインターネットでの情報形成を対立させる視点で書かれているのかよく判らん箇所がチラホラする。私の読解力の問題かもしれんが。
前者の視点だと、ネットでガンガン配信している出版社とか東京ローカル(番組をyoutubeにアップしている)を常に考慮に入れないといけない。

加えて、著者は地方紙などで地域密着性の強さを武器に対象をプロファイリングした広告(チラシ)の挿入やスプリット版の提案をしている。
アイディアとしては悪くないが、実際に広告チラシを配布家庭毎に色分けするなんてコストを誰が負担するのか?また、スプリット版(仕事に出る夫と家庭にいる妻で分割できるアイディア)も、例えば共働きの家庭はどうすんだ、という素朴な疑問にブチあたる。
仮に、これを実現できたとしても、ネットではシリウステクノロジーが開発しているような地域性のある広告露出アプローチなどの研究・実用化が進んでいる。こちらの方が低コストで実現できるのは間違いない。これでは地方紙は勝てんよ。

一方で、終章で述べられるメディアアウト・パラダイムに対する打ち手の事例として紹介されたのがリコーGRとブラザー工業のブログというのもちょっと引いた。
後者なんて筆者が認めているとおり2007年3月以降新規エントリがないのであるし、死にコンテンツと言って良い。未だにそんな昔の成功事例を引っ張ってこざるを得ないこと自体が、現時点では広く成功する手段ではないということを認めていることになるのではないか。

まぁいろいろ書いたけど、現状のマスメディアの抱える問題を総花的に見るには良く、今後の考察の一助にはなるかもしれないが、逆に言うとピントがボケてて既存メディア頑張れよ応援してるぜ俺は的なものしか感じられないかもしれない。

私自身もマスメディアは必要だとは思うが、それは放送などに代表される、同時に同じ情報を共有することによる「社会との一体感」の形成でとりあえず意義としては充分なのかなと感じている。
まぁ、どうでもいいですけど。私はテレビ持ってないし。明日も忙しそうだから寝るか。
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