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プチ社長日記:『旅館再生の教科書』の話

今年2回目の大雪の日に開催された、著者のホームパーティーの場でいただいたので。

南原氏は『マネーの虎』で有名な方で、(とは言っても私はテレビを全く見ない人間なのでタイムリーに知っていた訳ではないが、)ロータスやMGローバーの日本輸入などを手掛け、今では沖縄レンタカーや飲食業などいろいろやっている方である。

本書は氏が買収し黒字転換させた旅館『呼帆荘(こはんそう)』の記録をもとに、旅館業についての考察を交えて記された本である。
まぁ、理論云々が先行するより実体験に即して書かれているので、読み物としては面白い一冊になっている。
ただ、最初の方で『全国旅館の90%が赤字』と謳われていて、それは事実なのだろうが、『それでも再生はできる』というプロットには若干、違和感を覚える。

旅館というのは家族経営色が濃く残る所が多い。星野リゾートなどの大資本で運営されているのは数としてはまだまだ少数派である。
つまり、節税の為に『わざと赤字』としている旅館が多数存在しているのである。
『それらは間引いて見る必要がありますよね』と指摘すると、ちょっと考えて『でも、恒常的な赤字だと銀行が金を貸さないでしょ』との回答であった。

事実は、少し異なる。
旅館のような、それなりに規模の大きい施設で稼ぐ業態は原価償却の額が大きく、会計上は赤字であってもそれらは帳簿上の金額であって、実際の金が出て行っている訳ではない。
銀行が着目するのは現金の流れなので、フローが(金利を捻出できるだけの)プラスだと金を貸す。逆に、そのフローがマイナスだと、たとえ担保が十分残っていても、そのマイナスが臨時的なものであるという説明がつかなければ回収にかかる。
つまり、このカラクリ無くして『全国旅館の90%が赤字』という異常事態が、そもそも発生し得ない。
そこまで赤字の旅館が多くなる前に、潰れるからだ。

無論、『全国旅館の90%が赤字』という事実は、本を売る上でのキャッチコピーとして有効だと思われるし、著者がそのことに気付いていない筈はないと思うのだが、読み手としてはその辺を踏まえた方がよいだろう。

節税の為に利益を出さない、というのは健全な姿勢ではなく、こういう守備重視の経営姿勢が根付いていしまっている状態こそが問題であろう。
補助金が出るから農業やった方がいいですよ(やってるフリだけでもした方がいいですよ)、というのと似ていて、テクニックとして使用することはあっても、それを前提に経営方針を決めるべきでは、無論、ないのだ。

そういう意味で、いみじくも著者が指摘しているように、『当たり前のことをやる』ことで更に儲かる旅館も多くあるはずだ。
その経験談としては本書は読ませる内容となっているし、自分の棲む業界に照らし合わせても、示唆に富むと思われる。
(話を聞いてて一番面白かった、買収価額決定の顛末などが記されていないのが残念ではあるが。)
れびゅー | permalink | comments(0) | -

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