プチ社長日記:『近うて遠きもの』の話

近うて遠きもの
宮のべの祭り
はらから・親族の中。
〜枕草子 一六○段〜

『名古屋まで随分遠いな』そう思っていると、いつの間にか名古屋を通過して京都に着く直前だった。
今日は、いつもと違って京都も通り過ぎる。目的地は神戸だ。

神戸に行くのは、早いもので9年半ぶりになる。
新大阪で新幹線『さくら』に乗り換える。わずか10数分だが、普通車でも4列のシートにお得感を抱いてしまうのは、元鉄道ファンだからだろうか。今は見る影も無いが。

雨の中、地下鉄とJRを乗り継ぎ、タクシーを拾って目的地である教会へ。
あまりにも小さいので、ここがそうなのか迷う。
周囲を窺いながら歩を進めると、入り口傍でばったりと花嫁と会う。
僕のはとこだ。
はとこと言っても、僕より1歳年上である。
驚いて口を大きく開けている。
花嫁に向かって最初に思うことではないかも知れないが、
『ん、元気そうだ。良かった。』と安心する。

控え室で記帳している間に、花婿の入場が始まってしまい、少し入り口で待つことになる。
遅れて入ると僕のいとこが手招きしている。(花嫁から見れば叔母にあたる。)
そして、その親にあたる私の伯母は最前列に座している。
白髪で矍鑠とした姿は、映画『サマー・ウォーズ』に出てくるおばあちゃんを彷彿とさせるが、もっと落ち着いた雰囲気だ。戦時に多感な頃を迎えた大正生まれである。少々のことでは動じない。
僕は勿論のこと、僕と同じ時代に生きている日本人にない空気を、いつも感じる。

その伯母も、娘に先立たれた時はさすがにつらかったようだ。
僕が仏壇に手を合わせた時に、『長生きはするもんじゃないわねぇ』と呟いたのは今もはっきりと覚えている。

・・・はとこの式は粛然と進む。
伯母は、殆ど見えなくなったという目から感涙を落としている。
『長生きしてて、良かったですね』そう思った。
そう思えただけでも神戸に来て良かった。

***
教会近くのレストランでの披露宴の後、皆と別れ、雨があがったので海沿いの店まで移動して酒を飲み、北野ホテルに泊まる。
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一度泊まってみたいと思っていたのだが、当日ですんなり予約が取れた。
今週は平日も徹夜が2回ほどあり、さすがに疲れが溜まっており、しかも明日は朝一に移動して、別件の打ち合わせが午後にある。実家に泊まってはどうしても初動が遅れる。
披露宴の間中、親族は皆、僕の結婚はいつなのかと聞いてきた。
別に誰かに背中を押されてするものでもないし、祝賀ムードに便乗してするものでもなかろう。
とはいえ、無碍にもできぬので適当に合わす。

兄夫婦は、日曜に娘の七五三を祝うらしい。つまり僕の姪であるところの彼女は3歳である。
参加しないつもりなのかと僕を責めたが、そもそもそんな予定を聞かされていないと僕は抗弁する。

ただ、普通ならば姪の七五三を僕も楽しみにすべき立場なのかもしれない。

親族の仲は近くて遠いものというが、もしかしたら遠ざけているのは僕かもしれない。
寝付きの悪い夜になりそうだと諦め、目を瞑る。
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